SOTO

彼女は誰よりも有名なオペラ歌手であった。
彼女が舞台に立つとされれば、コンサートホールは常に満員御礼、チケットはすぐさま完売、金でより良い席を取ろうと富豪たちも争う有様。
ガラルの地で最も有名な人物は誰かと問われれば、その候補に名が上がるほどだった。

彼女は時代の中心にいた。そして、彼女もそうであると自認した。――彼女の自尊心は、褒め称えられるたびに、過剰になっていたのだ。
傲慢に振る舞おうが、彼女は肯定される。その愉悦に酔った女は、次第に強欲になっていく。見咎める者がいないのならば、なおさら。

ライバルを蹴散らし、自分より才能がないものを見下し、全てを嘲笑うようになった女は、ある悲劇で幕を閉じる。
全てが天下と笑う彼女の紅茶に、激毒が盛られるまでは。

舌を焼いた。喉を焼いた、胃を焼いた。臓腑全てが焼け爛れ腐り、嘔吐したところで手遅れだった。
彼女に毒を盛ったのは、その場にいるすべてのひとびとの総意だった。
彼女の声は失われ、清掃員が部屋に入るまで、瀕死の少女は捨て置かれた。

そうして。彼女は花の盛りである歌手で18歳の少女時代を奪われた。
絶頂の時、声を奪われるという無惨な方法で。

告発した。毒を盛った全てに。
だが、彼女の訴えは通らなかった。すでに劇毒は始末され、その場にいたひとびとは口裏を合わせ、「彼女は前から花の盛りの少女時代で夢になりたいと言っていた」「老いを恐れて自分で服毒自殺をしようとしたのを慰めていたのに」と、ない事実をでっち上げられた。

死のうなんて思ったことはない！
私は、最高の今を生き続けていたのよ！

あまりの傲慢な物言いに、裁判官たちも閉口する。
たとえ、服毒自殺を計っていなくても、彼女は誰かに罪を着せるような存在だと後ろ指をさされ、気づけば彼女は表舞台から消されていた。
歌えない喉と、胃に開けた穴から栄養を流さねば生きられない肉体と、これから続く暗い未来を嫌がり家財道具と金を全て持ち逃げした家族だったひとびとと。

少女の未来は暗く閉ざされてしまった。
数多の悲劇に苛まれ、少女は狂った。
声さえあれば。声さえあれば、歌声さえ戻れば。私はまた、あのライトの下で輝ける。そのためならば、どんな汚泥も飲み下そう。

全ての罪を白日に晒し、私はまた、あの輝かしい舞台で星になる。誰よりも、神すらも私に手出しできない、輝ける照明の下に。
ありとあらゆる医療を、民間療法を、下法を試した。しかし、失われた臓器を元に戻す術もなく、喉に貼り付けた機械で、声もどきを発するのみ。
最後に残された手段は――魔術。魔術に傾倒した彼女は、才覚があったのか、外道そのものの全てを身に宿してゆく。
裏社会でそこそこ金が稼げるようになった時、彼女の元にある情報が舞い込む。
全ての願いを叶える秘宝――「願い星」。
そのために、女は静かに行動を開始した。

全ては、あのスポットライトの下に帰るために。

ケリー(ｹﾞﾝｶﾞｰ♀)

…現在自分を保管している主。特に何も感じていない。
「La La …」

サミュエル(ｲｵﾙﾌﾞ♂)

…自分を「回収」する際に主を手伝った存在。
「La La ……」

パーソンズ(ｾｷﾀﾝｻﾞﾝ♂)

…自分を「回収」する際に主を手伝った存在。
「La ……」

募集してますけど関係性結べますかね……！？