Scolding of the ocean

▼ よそ様のお子さんとの絡み

≪お友達？≫
【竹の子様宅】
「……そう、眷属になりたいだなんて物好きね……それだけヒトを操ってみたいということなの？……でもね、残念。私は眷属を取らない主義なの(あっっっっぶな！！！え！！？大体みんなこんな発言イタイワーとかドン引きしてくるのにいい子ね！！！？？でも眷属の仕方とかしらないし！！？？)」
クーリアさん(Aｷｭｳｺﾝ♀)…お互い野宿が嫌い！ということで波長が合うようですが、魔女としての皮を被りすぎて不思議となんだかずれてるような噛み合ってるような関係です！
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▼ 魔の名前を持つ女

彼女は惰性を愛している。
彼女は不変を慈しんでいる。

彼女の明日は無く、雑然とした今しか生きられない。
諦めている女の下らない感傷は、握りつぶされた過去を清算することもできないまま。

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……魔女と呼ばれるものとは一体何か。それは、「認識・認知に釘を穿ち、アカシックレコードに沿い世界認識の保全と保険を行う」ための存在である。
全ての存在は「観測器」としての役割を持ち得ており、少なからず観測者として成り立っている。
だが、魔女と呼ばれる者の観測の規模は個々人ができる観測能力を大きく上回っている。それこそ、自分の「認識」を弄って年齢を操作できるほどには。

つまり、魔女は「観測者」の忌まれる名ともいえる。故に、彼女個人を差す名は何処にも存在してはいないのだ。
彼女がその自分の「本質」を放棄することで、彼女は誰の干渉もできない「魔女」としての誰かになることで、ヒトとの交流を完全に絶った、そういう個体だった。
女は他者が嫌いだった。他者を嫌いながらヒトの交流に飢えて、だが正面から自分をあけすけにさらすことなどできはしない。
だから、諦めた。自分の能力を使うことで、全てを合理的に動かせるが、それは結局のところ、彼ら自身が心から行っていることではない。自発的で能動的なものではない。誰も自分という存在を見て、求めて、何かをしよう、言葉を交わしたいと願うことはない。
何故なら、そういうものなので。
世界から、はじき出されてしまっているので。

ここでようやく魔女について話が戻る。
彼女はこのアローラ地方に「数千年前からいた」という設定を成された存在である。
つまり、彼女は「観測者」であった。カプたちというありあわせの神という存在しかいないアローラ地方において、全島を観察し、観測し、認識を固定化する役割があった。

しかし彼女にはその固定化するのはいいものの、「大世界」を観測する神がいなかった。
彼女はアローラそのものを観察し、観測する神に近い役割を独りで背負っていた。
……と言えばいい話だが。彼女はそれをいいことに、自分の寿命すらも操作し、「認識を固定化する」「つまり自分の都合のいい認識を世界に与えることで、自分の都合の良いように世界を動かすことができる」……という風に都合のいい世界を作っていた。
何故観測者として生きることにしたのか、数千年生きることを選んだのかは自分でも忘却し、自身の名前すら忘却してしまったので、彼女は魔女と名乗り、平和なアローラで観測をし続け、自分の都合のいいように楽しんで生きていけることを行っていた。やろうと思えばマラサダやパンケーキの店で「私は株主とかすごいなんか優遇される立場の存在」と店員の認知を操作し悠々自適に生きていた。

が。アオが余計なことをしたのである。つまり神の降臨。「大世界」を観測する、定点固定観測者の固着化だ。
ソルガレオとルナアーラが「アローラに君臨する新しき神」としてカプが迎え、今までの魔女の自由な行動が制限されることとなった。最早世界すら彼女の支配を脱却し、魔女は「魔女」という全能を失った。
そのツケとしてソルガレオとルナアーラが彼女に新たな仕事を託したのである。
「ネクロズマというかつてアルセウスたちが彼の力を奪い、権能を奪った末の分岐した世界線での創造神が、この世界を侵食する形で新しい並行世界を創造している」「それの解決にむかえ」。これが魔女がウルトラサンムーンに加入しその世界を滅ぼす理由である。


この行動の発端は、最初に魔女はアオに「ソルガレオとルナアーラ」を復活してほしくなかったことである。
既にソルガレオとルナアーラの「権能」を連れたアオを見た魔女は、ラナキラマウンテンを通過する彼らの邪魔をすべく、活動を開始した。

……が、アオの方があまりにも上手であった。すぐに魔女を「自分より長生きしている女」と嗅ぎつけ警戒し、話すらもマトモにすることができず、とぼとぼと追い返されるにいたるのであった。 なので、まずチョロそうなイリオを篭絡することを考えた。篭絡し、アオの情報を引き出すことを考えたが……ｳﾝ千年レベルの処女喪女が篭絡できるであろうか？いやできない。 またイリオ自身も性的耐性というより性欲が薄いため真正面から「お前……俺の故郷にいたよくおやつくれるバアチャンに似てる……」という感想を抱かれる始末であった。
………

そして、サンメンツはアオの事実上の死というカタチで終局を迎える。
ネクロズマはかつて、反転世界と呼ばれた黄泉の国に厳重に封印された「創造神の力を持つもの」であった。それはテンカラットヒルに首と肉体を分離され封印され。肉体はいずこかへ、その首はテンカラットヒルの奥地の「祭壇」と呼ばれるところに祭られていた。
「時折膨大な力を宿す」子どもが実験的に生まれるのは彼の力であった。

そのネクロズマは、光の残渣を祭事のたびに奪われていた。最終的に肉体はその首を見つけ、大きな被害をもたらしながらこの世界に対して牙を剥こうとした。
アオはそれと心中するように、ウルトラホールに共に消えていった。
アオという存在がなければ生きていけない少女たちを世界に残して。
プアは自分を守護するアオという存在がいなければ食べて、寝るということもままならなかった。カイマヒネはアオという帰る場所がなければ何処かへ消えていくことを選んだ。ケカリネはアオという生きる導がなければ生きることもできなかった。

イリオは。彼女たちを繋ぎとめることを選ばなかった。いいや。「何もしなかった」。
それが彼の最大の欠陥である。
「少女たちから返される善意がなかったから、それを返す義理がないから探しに行くこともする意味がない」。それが彼の選んだ結論である。彼女たちが戻る気がなければ連れ戻すこともしない。
それが魔女にとっては予想外だったのだ。「あのアオという男の旅に着いていったのであれば、彼の後始末ぐらいするのでは？」という先入観があったために。

イリオは鏡である。
世界には善意がある。その善意を跳ね返すものであり、その悪意を映し返すものである。主体性のない物質。偶像にすぎない救世主像。それがイリオという存在を構成するものでしかない。
「なるほど、空洞だ」「千年生き、無作為に生きた自分よりもがらんどうだ」「はじめから自分がなかったために、彼女たちを簡単に振り払える」「なんと愚かな男だろう」

魔女は問う。「お前自身の意思は何がある」。答える。「自分の意思で動いていると思う」「じゃあ善意を跳ね返す以上の行動はしたか」問う。「そういえば答えがないな」「なかったな」答える。
ああ。そうだ。世界に全部自分の意志を預けている。預けて、判断してもらう。他人の感情に、自分の感情をゆだねている。自分から発するものは何もない。

ああ。ひどく自分と似ている。私自身は何も変わりたくない。無意味に数千年を生きた。無作為に生きた。勝手に変動する世界を見届けて、何もかも知った顔で見届けて、傷ついて苦しむ人たちを眺めて、超越者のフリをして見守ってやる。
これから実のある「私」として。「魔女」以外の生き方はできはしない。それが「魔女」として生きるものを構成する要素だ。「私」という存在なんて忘れてしまった、「見返したくなかった」。ありのままの私として生きていくことなんて、痛みを伴いすぎる生き方だ。

今更私を救ってほしいなど、ありはしない。
今更「私」を見つけてほしいなど、ありはしない。

魔女は変わることを恐れ続ける。痛みがある生き方を拒絶し続ける。
自分に近い何かを抱えるこの男に対しては親近感がある。でもどうしても認められない嫌悪感がある。それでも自分に近いから居心地がいい。

そうしてイリオの側で何となしにいて、イリオもまた彼女のことをなんとなしに側にいることに気づいて、何となしに世話を焼く。
あまりにもプラスにもならない。マイナスでもない。何も与えない。進むこともなくて、後ろに下がることもない。ただの、そう。都合のいい、居場所同士。



「何故、そこで立ち止まるのですか」

彼が二人の扉を開けるまでは。

▼ 名前を失った女

生まれた瞬間から、役割があった。
ラナキラマウンテンの魔女。
世界から存在を焼却された「染み」。
辿り着いてはならない深奥に辿り着き、焼き消された女。

……

私の望みは、何ら変わったことじゃない。幸せになりたかったんだ。
生まれた時からひとりぼっちで、出会う人は皆私を魔女と呼んだわ。
不思議な話よね、私はその時、観測者でもなんでもなかった。それでも雪山でぽつりと生き残る子どもは異質だったようね。
両親なんてものは分からなかった。どこにもいないのだもの。私の友は数多の本だった。私の頭の中にはどうしてか文字があり、私は文字を共にした。
雪山にこもって本を読む薄着の子ども。私は周囲のヒトとのかかわりがないものだから、それがどう受け取られているだなんて分からないものだった。


私、貴方たちに何も酷いことをしていないじゃない。
私、別に何もしていないじゃない。
私、ずっと一人でいただけなのに。
ひとりが悪いことなの？私が何をしたというの？

ただ、――ただ、悲しかった。
どうして、私はこんなに嫌われているの？悪いことをしなければ、きっと誰かがお友達になってくれるはずではなかったの？
数多の本が嘘つきになった。だから私はそれを全て山から放り出して閉じこもった。




――そうだ、作ってしまえばいい。
私は思った。私の絶対の味方を、私が作ってしまえばいい。

私は禁忌に触れた。
数多の本が私にあらゆる叡智を与えた。だけど、私にとって必要なはずの「心」を、「ぬくもり」を教えてはくれなかった。
優しさを知るはずのない子どもが、禁忌等知り得るはずもない。やっていけないことなんて何もない。

私は知らない。どうして私がそこに一人でいたのか。
私は知らない。どうして私は膨大な本を相手に一人で生きていけたのか。

私は知らない。どうして、食べることも寝ることも知らないただの少女がここまで生きてしまっているのか。

ただ、できると思った。私はその膨大な本に描かれた叡智を実行する術を知ってしまっていた。
ページをめくり、力を込めて、再定義して、生み出せばいい。私は新しい何かを作ればいい。

そうして生み出したのは、小さなタマゴだった。
私はその時知ったのだ。小さなぬくもりがここにあること。私以外の誰かがここにあると言うこと。

私が再定義される。いいや、私“が”再定義した。
今、この世界に生み出されてならないものを私は干渉した。


私が失敗作と断じてしまったナナは、

また、私は一人になった。



命の始まりを知ってしまった。
……そして。それが、その先にあるものを知ってしまった。
瞬間、脳の奥の方から、私の心も何もかもを焼き尽くす灼熱を知った。

それが、「存在焼却」。魔女と呼ばれ続けた私の呆気ない孤独な最期。

・
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――目が、覚めてしまっている。


「突然で悪うござんすな」

耳障りな朗らかさがうざったい。 私は泥の中から意識を起こして、胸糞が悪いと心の中でつぶやいたが、呵々とした笑い声が耳の中を通り抜けた。
理解している。理解して、尚。



既に、魔女の役割は失われつつある。
既に、自分の過去は清算される時を待っている。
未来を否定し、過去を見ないふりして、今の変容を否定して、閉じこもるのは楽だった。

神様のような存在となってから無為に生きてきた。
そう設定されたと知っているのに、膨大な日々の年月を遡らされる。
何もしない、何もできない、何もやらない。希望はない。未来はない。明日は無い。

目の前に映る誰かのことを考える。今という時間にしがみつく。もう時間は無い。無為に生きればイリオという男はあっという間に消えていく。
だから問わなければならない。どこにも行けない私たちの答えを知るために。


「貴方は何になりたいの？」
「貴方は私をどう思うの？」
「私たちは一体何なの？」
「私たちは何も知らないことをいいとするの？」

「貴方は一体――誰なの？」


彼の答えは分からない。
イリオという存在の答えを見つける時。私も答えを知らなければならないのなら。





魔女ではない私の名は、



物語が幕を開く。