Scolding of the ocean

▼ よそ様のお子さんとの絡み

≪家族のような≫
【苦労様宅】
「クラドママ〜！！えへへ〜！ねぇねぇ、あそこの大判焼き買って〜！！ええ〜……ごはんちゃんと食べるよお」
クラドさん(ｶﾞﾌﾞﾘｱｽ♂)：【呼び方/クラドさん、クラドママ】…一緒に住んでる家族のような…面倒を見てくださる方！懐いているようです！
「どうして、わたしをあの日拾ったの。どうして、わたしと一緒に暮らしてくれるの。どうして、あなたはそんなに優しいの。どうして。なんで。教えて。意味が知りたい。わたしは、どうして、どうして……」

≪お世話になってる≫
【いすず様宅】
「あう……マルニアちゃん〜！！ごめん〜〜！またやっちゃってねぇ、……あのね、グラエナの尻尾ふんじゃった〜〜〜〜〜〜！！！ごめ〜〜〜〜〜ん！！！ドレスくんもラインバルトくんも助けて〜〜〜〜〜〜！！！」
マルニアさん(ｶﾞﾌﾞﾘｱｽ♀)：【呼び方/マルビアちゃん】
アンドレアスくん(ｱﾏﾙﾙｶﾞ♂)：【呼び方/ドレスくん】
ラインバルトさん(ｶﾞﾁｺﾞﾗｽ♂)：【呼び方/ラインバルトくん】
　…お世話になってるギルドの皆様！事件を運んでいきます！！()

≪おともだち≫
【夜半様宅】
「あ〜〜〜！！いいヒトだ〜〜やっほーーーろーとれっくさーん！！久しぶり〜〜〜！！ええ〜〜〜？？何で逃げるの〜〜〜？」
ロートレックさん(ﾌﾞﾘｶﾞﾛﾝ♂)：【呼び方/ろーとれっくさん、いいヒト】…ふらふら危ういので出会うたびにトラブルを運び巻き込んでます！！平穏を積極的に破壊するスタイル

【花様宅】
「う〜〜〜……お薬しみる〜〜〜……でも…ありがとお〜……」
こずえさん(ﾌｼｷﾞﾊﾞﾅ♂)【呼び方/こずえさん】…お友達！素足で歩きまわるので傷を治療してもらったり！

ANSWER

彼女の記憶能力は少々異質である。というのもそれは“記憶能力”というより“ログから記憶を引き出している”という状態に近い。

この世界はある一つの記憶装置に制御されている。それが“アカシックレコード”と呼ばれるものである。
これはいわゆる、「ヒトゲノム」「遺伝情報」とも呼べるシロモノである。
遺伝子は「遺伝の配列によりそれぞれの身体の仕組み、寿命、病気すらもログとして溜めこまれており、それを元にタンパク質が合成されて“個人”という形を作る」というシステムである。
彼女らはそのログから情報を抜き取り「理解はしないが世界に存在証明できる」ため莫大なエネルギーを行使できる。
600族は特に強いが、フィメルに関しては「アカシックレコードから意識して記憶情報を抜き取ったり実施したりできる」という力を持つ。
そもそも全てのポケモンが実行できるはずだが、彼女曰く「皆は体が覚えた記憶からやってるけれど、わたしは“意味記憶"。海馬から抜き取れる場所に、“やり方を知っている"」ということ。
昔は代々ありとあらゆる600族が実行できていたが、経年劣化により現在は彼女しか実行できない。

そのためか、鞄に「本体」を持ち歩いている。

「あなたは遠く、私は遠いの。私は記録、あなたは事象。世界はひとつ。未来はたくさん。可能性を語りましょう。わたしの役目はただひとつ。夢を語るのは空へ。あなたの目には、未来はひとつ。道は遠く。わたしは彼方。バラまかれたのは数多の導。星を見よ、未来を見つけてね」

RAIN

『されど至るはこの地の終焉。終わらせよう、何もかもを。これぞ世界の終幕。我が名は――アーカーシャ』


***


やっと。私はここに辿りついた。やっと。とっても長かった。
わたしの想いの全ての先へ。私の願いの辿りつく終着点。

そして、世界は終わりを告げる。私の願った全ての決着を、さあ。


***


それはただの少女の呪い。
彼女はただただ呪っていた。世界の全てを。何もかもを。滅せよという確固たる意志による大災害。
己の肉体すらも人柱にして地獄を臨界させたかった童女の願望。

フィメルという少女の過去には、とある傷がある。
彼女の両親、兄弟、血族一人残らず、自分の目の前で惨殺された。見るも無残なその光景を瞼に映し。感情を処理できないまま、その憎き仇は殺害された。
人並みの復讐心だとか、受け入れきれないまま何もかもがあっという間に片付いて、少女の肢体は雨降るその日に打ち捨てられた。
どうして、と問うた少女の言葉に返答はないはずだった。

「君が弱く、そして力が無く。何も持たぬ者だからだ」

それならば何もかもを失うのは頷ける。
仇という目的すらも宙ぶらりんになった少女は、その目の前でうごめく緑色の塊をぼんやりと見る。
光など射さぬ。とうに日は暮れた。しとどに降りつく言葉に、返答できるほどの志も、何もかもを失った己がに酷薄に告げた言葉に、ただ納得するしかできない。

「わたしは弱くて何も無いから、こうなったの？」
「是」
「そっかあ。そっかあ……」

受け入れるしかなかった。幼くて小さくて何も無い自我は、その雨粒を黙って受け止めるしかない。
それの言葉は続く。力が欲しいのか、とか。この現実を変える何かが欲しいのか、と。

「ほしいよ。現実なんて要らないの。ただ過去に戻りたい。あの一瞬で何もかもを失った後悔が苦しいの。ねえ、どうにかならない？」
「是――とは言えない。ただ、私は血縁者の器に用向きがあり。もし可能であればお前の望みが叶うかもしれない。そういう手助け程度ならば可能である」

ふうん、と呟き。少女はその緑色の生き物に手を伸ばす。
それは。今ではこう呼ばれている。
「ジガルデ・セル」。このカロスの地を調停する者。

何も知らない少女は、その存在と「接続」した。



膨大なことを知った。
世界の広さ。世界の醜さ。美しさ。ひとのいとなみ。過去のこと、未来の事、今のこと、ひとの脈々と続く点と線。星座を指でなぞるがのごとく。満天に手のひらをかざし、握りこんだ光を引き寄せ、覗き込む。
ジガルデ。それはカロスの地を支配する「調停者」に在らず。それは元来、世界の縮図。世界全ての情報。世界は設計図から始まっている。
その名は「アーカーシャ」。とある神秘学者が提唱した「宇宙誕生以来のすべての存在について、あらゆる情報がたくわえられているという記録層」、「アカシックレコード」とも。

少女の脳は焼き切れるような情報の波に晒された。それでも少女は泳ぎ切る。彼女の自我は傷ついていた。既にどう傷ついても構わないとも思う捨て鉢さの強さか。
少女は探した。ありとあらゆる可能性の最果てを。あの日、失わなかったかもしれない未来を探して、繋ぎ合わせて――見つからなかった。
あの日、自分を残して一族は死に耐える。探しても、探しても、探しても。どれだけ計算しても、どれだけ点と線を繋げても、焼き切れた未来の先はない。もう当に彼らの未来は剥奪されることはずっと前から決まっていて。己だけが放り出される。そんな未来に、少女は静かに目を閉じた。

「どうして？」

少女の疑問は潰えない。
ただ、欲しかった未来を求めることすら許されないのかと。
ただ、幸せになりたかったと願うことが罪なのかと。

独り。何処にもいけず、小さな子どもの肉体を引きずって生き続けるしか。「アーカーシャ」を使用して、他人の営みの隙間を擦り抜け続けるしか生きられないのか。
それは放浪。家族を失い、よりどころを亡くした少女の帰る場所は既に無く。この世界からつまみ出された自我の果てなど。何も。

「祈るがいい」
「我が血縁者、我が器。お前にかつて、私は告げた」
「お前の望みを叶えるならば、私に全てを捧げて祈れ」

「さあ。お前を受け入れぬ世界など燃やし尽くせ。あの日の雨程度は消せぬ憎悪がお前に在り続けるのならば」
「この世界に“私”の臨界を。しかして。世界は焼却される。お前が願った黄昏を、私は叶えてやれるだろう」

赤い火は燃ゆ。
それが少女に残された願いの全て。
あの赤い火が少女の全てを奪ったのならば、私はその火で世界の全てを奪い去ろう。
もう望みも願いも尽きたこの身に宿らせた、たった一つの祈りだった。

少女はそうして、「アーカーシャ」をこの世に現界させるため、果てしない旅を続ける。
そうして、この世界の滅びを望むのだ。あの日の黄昏で、世界を焼き付けるように。



***


ざあざあと雨が降った。
私の願いは叶わなかった。今を生きるひとたちの、精一杯の足掻きが、精一杯生きてきた私の願いを否定した。

皆ずるい。
私だって、何かを叶えたかった。皆、ささやかな願いを叶えているくせに。何も叶えられなかった私の願いを壊していくんだ。
パパとママと、小さな私の弟が一緒にいる小さな世界を取り戻したいと、叶わないなら壊したいと思う願いすら。

雨が寒い。独りで膝を抱えて蹲って、私はちっぽけに世界の片隅で生き続ける。
心が空洞になって、しとしとと私の中の何かが溶けて広がっていく。
私が失われていく。
この雨はそんな雨なんだろうと、私はそうやって蹲って寒さに震える。

そう、そんな私に。誰かが傘をさすまでは。