Scolding of the ocean

▼ よそ様のお子さんとの絡み

≪友達以上恋人未満≫
【みけ様宅】
「ちょwwホントにやったのラコツwwま、頑張りなさいなww」 ラコツさん(ﾀﾞｲｹﾝｷ♂)：【呼び方/ラコツ】…友達以上だけど恋人ではないような、兄弟のような親友のような、そんな関係。
「何でアンタにまたねって言っちゃったんだろう。不思議。もう会える気はしなかったのに。でも、先にいくわね。――約束！忘れてなきゃ、どこかで叶えてくれるといいわ。きっと、ね」

≪友人≫
【みけ様宅】
「あら〜ゴウシンちゃーん！相変わらずいい胸ね〜！」(ｸﾞﾜｼ)
ゴウシンさん(ｸﾘﾑｶﾞﾝ♀)：【呼び方/ゴウシンちゃん】……お友達！セクハラしてます……()

【宵波ロア様宅】
「チェ〜〜〜〜〜〜〜〜カ〜〜〜〜〜〜〜！！お酒！！！お酒持ってきたの！！飲みましょ！！」
チェカさん(ｾﾞﾌﾞﾗｲｶ♀)：【呼び方/チェカ】…友達！！たまに飲み比べしたりワイワイ遊んでます！！

日は昇らず

その国は「坐する神がいない大地」と呼ばれていた。
恐らくそれは皮肉であり、嫌味であり、そしてどこまでも事実だった。

イッシュ地方とは、そういう場所だった。運が悪ければ無残に殺され、運が良ければただ生きられる。 綱渡りをしている。右足が正しいのか、左足が正しいのか。書き込めば正解を寄越してくれるペーパーテストなんてどこにもない。何も正しくなくて、何もかもが狂った場所にただただ生まれた少女も、どちらかと言えば「運が悪い」方だった。

火が上がっている。轟々と、何かが迫ってくる。
誰かが言う。「フールジーンだ」、なんてそんな言葉は分からない。
分かるのは厄災が舞い降りて、地獄が生まれ。私の故郷は焼かれ、両親は死に、弟も死んだ。
そこに転がり落ちたのはただの「運悪く厄災から生き残ってしまった私と従妹」だ。

結果などとうに目に見えていた。
最初は頑張ってみた。「運が悪い」方じゃなくて、ちゃんと立ち上がれるのだという自負を肯定するために。
両親が「ヒトを愛しなさい」と優しく撫でてくれたみたいに、彼女を庇護しよう、そして守り通していこう。幼心に考えて、足掻いて、足掻いて、足掻いて――ただ、出来心だったのだ。

置いていけば、私は楽になれる。頑張ったんだもの。許される気がする。だから、今だけ。少しだけ。一瞬だけ。
己を唯一の身内として甘える少女が重たくて、その手を振りほどいて逃げ出した。
穢れて、穢されて、泣きたいほどつらくって。子どもの頃に夢見たことなんて「運が悪い」方だからって失って。納得なんてできなくて、私は走って走って、そうしてその場所に辿り着いた。

研究所に保護されてからは生活は「運の悪い」方じゃなくって、「運が良い」なんて喜んだ。私は暖かな生活を手に入れると同時に、それを実感するにつれ、罪悪感が追い付いてくる。
あの子を置いてきてしまった。
あの子を見離してしまった。
あの子を、「運の悪い」方のままに置き去りにしてしまった。

楽しかった。とても。研究所で新たにできたミチェイルとテオルという幼馴染と過ごす日々は。
楽しくって、楽しくって。ミチェイルにはあの子にできなかったぐらい可愛がって。それで、それで。
私はもう一度あの場所に足を運んでみる。そこにはもう何もなくて、私の判断を刻銘に告げてくる。

「あの子を犠牲にしたことで、私は運が良い方向に行けてしまった」
「誰かの幸福を奪って、幸せになったくせに、幸せじゃないって顔ができるなんて、なんて厚顔無恥！」

そのことを思いついたのはなんとなくだった。
私の幸福はどこかに還元せねばならない。
私の未来は誰かの為にならなければならない。
あの子の――ナミュラの明日を奪ってまで生き残ろうとした私がそうするしかなかったように。
ひとを助けていこうと思う。許されなくても、救われなくても。

日は昇らず。明日など見えず。故に、私は今しか生きられないのならば、笑って生き続けるしかないのならば。

陽炎に消ゆ

旅は続く。しかして、旅路には終着点があり。そして始まりに回帰する。

「ひと助け」の旅路は、いつしか全ての因縁に収束した。
キュレム――可能性の獣。世界を混沌に乱す大災害。多くの命を犠牲にして、キュレムの封印は成され、英雄である 「神」は降臨した。

イッシュは、良い方向へ進んでいく。
進んでいくのに。行くことが分かっているのに、女の耳にはこびりついていた。

「ハイリンク、というものがある」
「可能性の収束地点。お前が失った全てを取り戻せる“可能性”があるとするのならば――」
「お前は、どうする？」

甘露すぎた誘惑は、女の心に食い込んだ。
己の心などそんなにも強くない。
人並みに傷ついて、人並みに悩んで、ただそれだけの女。ただの女の自我は、ただただ笑顔の仮面が上手いだけ。それで全て誤魔化せてしまうほどうまいだけ。
明日を語って、ずっと心は後ろを向いていた。
炎に飲まれたあの日から。あの日からやり直せたら、ずっと楽だ。罪悪感を抱えて生きて、その罪悪感の元が生きていると分かっていたも、ずっとずっと消えないその傷が苦しいので。だったら、全部なかったことにできるのだったらなんて。

取引をした。キュレムの力の欠片を預かり、あちこちにハイリンクに片足を突っ込める穴を空ける代わりに、その穴の先にある「可能性」を探るのは自由という、それだけの話。
キュレムは可能性の大災害だ。ハイリンクを支配し、ありとあらゆる過去と未来、並行世界を括り付け、ひとつの「場」にしつらえて、それを意のままにできるという「境界」そのもの。
何が起こるなんて予想ができても。今の平和を乱してまで、女はただただ、その罪悪感に炙られぬ「今」を望んだ。

長くて短い2年だった。
膨大な収束地点に、私の満足するものなど何もない。当たり前だ。だって、「可能性」なんてもの、星の数ほどあるのだから。キュレムはそれを分かっていた。だから嘲笑って、甘い言葉を囁いた。
並行世界は今やひとつに重なった。キュレムによって乱された法則は収束していき、ただ己が足掻いた痕跡ばかりが次々と間に合わず消えていく。
ただ。この罪悪感を何とかして消したかっただけなのだ。幸福になればなるほど首を絞める後悔が。
私は「運が良い」方に転がり落ちていい方ではなかった。あの日、私の故郷を焼いた火のように。誰かの明日を自分の判断で奪おうとして、自分勝手に帳尻を合わせたくてひとを助けようなんてうそぶいた。

それでも、いつかは限界が来る。
本来神が持つはずの膨大な力を、ただの女が操れる道理など。何かを捻じ曲げねば成されない。
対価は享楽。対価は、自分の融解。

死んでいく、と思った。だって、何故だか眠れない。だって、何故だか。息が上手くできない。
どうしてこんなに弱っているのか、なんてリティシに聞かれたって分からない。分かってるけど、分からない。

誤魔化して、誤魔化して、誤魔化して――その日、終わりは唐突に来た。

「貴方の罪業に清算を」

並行世界でも私は奪い、そして私は奪ってきた罪に裁かれる。

ああ、なんだ。
ずっとずっと思っていたことはただ一つなのだ。

私はただ、裁かれたくて生きていたのか。




それでも、でも、後悔ばかりが心に残る。
だって、「またね」って言ってしまったのに、